日本語の修得

  ベトナムの人達は、外国語を修得するのが早いですね。勿論、外国語の得意不得意はどこのどんな人にもありますので一概には言えないですが、ベトナムの人は比較的早いです。やはり、国に帰ってから ”日本語” を自分の一つの能力としてどのように活かすかを念頭に置いて日本語の修得に努めて欲しいと思います。「日本語が出来れば高い給与の仕事に就ける」 だけでは面白くないし限定的な言語能力になってしまうかも知れません。もっとも日本語を話せる人はとても増えましたので、日本語を話せるだけで ”高い給与” というのは今は簡単では無いですね。

  我々も外国語を勉強する時に、「言語の技術ではなく文化を学ばなくてはならない」 とよく言われてきました。そうですね。言葉の種類や状況による使い方の違い、そこには社会の常識、習慣、人間関係が当然関係してきますね。自分の国と比較して両方の良いところ、悪いところ、見えてきますね。その違いのバックグラウンドにも興味が広がってくるかもしれません。そこまで調べてみたくなるかもしれませんし、調べたことを確認すべく人間や習慣、社会の観察に至るかも知れません。そうなればもう "民間外交官" ですね。

  言語の技術の修得の上手い下手は人それぞれですので、苦労の程度も人それぞれですね。でもせっかく日本にいるのだから日本人と接する機会を多く持つことにが大事ですね。単に ”日本語講座” にたくさん出席しないさいということではありません。”日本語講座” などはもし機会があれば勿論参加したほうが良いですが、日本の暮らしの中で日本人と接し会話する機会をたくさん持つことができれば、と思います。そのためには、"技能実習生" や "留学生" に接する日本人は、うまく通じなくても何でもいつも話しかけて下さい。ベトナムの人、最初は何も返さずニヤニヤするばかり、そのうち飽きたような顔になって・・・通訳を通して聞いてみても、「日本語がまだ話せないのに日本語で話されてもわかるわけないじゃん」 って言われてしまったりするかも知れません・・・、日本人の方が心が折れそうになりますが、根気強く話しかけて下さい。通じなくてもずっと日本語で通してもいいですから、いつもいつも話しかけて下さい。国に帰ってから日本語をどう活かすなんてまだ考えてなくても、みんな日本語を上手に話したいという気持ちは持っています。だから勉強をすぐに始めるかといったら別ですが、上手になりたいという気持ちはみんな持っています。仕事上、モノがあればあまり言葉がなくてもある程度仕事が進められるという事もあるかも知れません。同じように、生活でも(仕事場でしたら休み時間とかですね)お互いに身振り手振りであっても、なんでもない事でも、いつもいつも話しかけて下さい。半年もすると・・・言葉の技術の上達はいろいろかと思いますが、コミュニケーションが驚くほど円滑になるかと思います。自然に言葉の技術も上達しているような、勘が優れて素直に新しい事を身につける人もいます。もしも、並行して”日本語講座” に参加する機会がある場合などは、日本語の勉強に興味と自信がついてくるかも知れません。

  技能実習生の場合、日本に行く前に日本語の基礎はみんな勉強してきますね。初めての外国語であまり自信が持てない段階で日本に来ている人も少なくないですね。「もっと出国前に日本語をしっかり勉強させてくれなきゃ・・・」 と言われる事をよく聞きます。実習とは言え、実務実習で仕事をしてもらう以上は、しっかり言葉を理解して欲しいと思うのは当然です。でも、もしも私がなじみのない外国語を3~4か月勉強して、そしてその言語だけの環境で仕事をすることになったら、初めはやはり黙ってしまうと思います。

  また、自信のない事でしたら、自信がないことが恥ずかしく、そこに日本語で話しかけられると、「日本語がまだ話せないのに日本語で話されてもわかるわけないじゃん」と、”自分が自信が無いような状態ではなく、まだ上手く話せる状況ではない” と、自分の自信がないところが恥ずかしく思い隠そうとしているのかも知れません。日本人の方は、「仕事もあるのにそんなことに付き合っていられない」というのが正直なところかと思います。根気の勝負になってしまいますが、あきらめずに頑張って下さい。実習生が、信頼して、興味を持って、そして集中した時には、必ず仕事の戦力になる筈です。信頼、興味、集中・・・と、少々ハードルが低くない条件を3つ並べましたが、信頼されていない、頼られていない、興味を持てない、そして反発したい、との感情を持った時には、これに対して強い団結力と集中力を発揮すると思います。ベトナムは戦争に負けたことが無いと言われます。でも戦争に勝ったということではないかも知れません。元々、戦争に勝つということでなく、ベトナムの独立を尊重せずに入り込んできた外国を追い出したかっただけで、絶対に ”負けない戦略” をしたのがベトナムの戦争と言われます。信頼されていない、どうせただの出稼ぎと見られる等々、人間としての尊重が虐げられたと感じるとモチベーションが逆に向かうかも知れません。”尊重”ということ、日本人の従業員に対する事と同じで十分です。(それ以上は反対に調子に乗ってしまうかも知れません。我々も同じ状況であった場合、自信が天に昇ってしまうかも知れませんね・・・。)信頼関係は、単純にはいつでも話しかけて、聞こうとして、聞かれようとして、お互い興味を持ってということがスタートなのであろうかと感じます。

2019年2月13日