タインホアの ”高専” モデル人材育成支援 

”出光興産” の ”ギソン製油所” のCMが日本で放映されていますが、とてもいいCMですね。(”ニソン製油所” と表記されていますが、”ギソン”の方が実際の発音に若干近いですね・・・ハノイでは”ギソン”だけどタインホアでは”ニソン”でしょうか・・・)TVで放映されているのは15秒か30秒ですが、”出光興産”のサイトには120秒版があります。こちらはもっといいです。ぜひご覧ください。 【TVCM】「NEXT IDEMITSU!父の仕事篇」120秒出光興産】

  ”ギソン製油所”のある”タインホア省” に、日本の高専(高等専門学校)を手本にした ”高専モデル“ といわれる人材育成に関するプロジェクトがあるのをご存知でしょうか?

  ベトナムは産油国で、良質の原油が産出されているのだそうです。でも、精製することができず、精製済みのガソリンなどは輸入するしかなかったそうです。良質の原油を安く輸出して、そんなに良質でないガソリンを高く輸入しているなんて言われていました。2009年に第一号の製油所として ”ズンクワット製油所" が稼働し、第二号として、日本、ベトナム、クウェート3か国のプロジェクトで ”ギソン製油所” がつくられ、いよいよこの年末から稼働しはじめるそうであす。長年の夢がひとつずつ現実へ動き出しています。

  ”ギソン製油所” の設置が決まり、様々な分野の高度人材が必要となってくるわけですが、人材育成機関が十分でなかったタインホア省が、中央政府へ要望、誘致を調整。それに対して商工省傘下のホーチミン工業大学が2008年に ”タインホア分校” を設置しました。そして、2013年から日本(JICA)の支援で、ここに日本の ”高専” にならった教育の仕組みを構築しようという ”人材育成支援” のプロジェクトが始まりました。日本の ”独立行政法人 国立高専機構” が協力し、ベトナム側カウンターパートは、ベトナム商工省と商工省傘下のホーチミン工業大学です。今年4月、このプロジェクトは当初の目的を果たして完了したそうです。日本のいくつかの高専から先生が常駐して、教育課程の構築、教官の指導、就職指導まで、多方面からの指導、支援をされたそうです。”独立行政法人 国立高専機構” は、今年ハノイに事務所を設置し、これから ”高専モデル” の全国展開へ、次のステップに進んでいるそうです。

  2018年6月に日本の “ものづくり系“ の ”技能検定” がベトナムの国家検定になりましたが、実践的技術者や高度加工技能者の人材育成がベトナムの工業立国に大変重要なことと思います。最近は、 「ベトナム政府は本当に工業化が重要と思っているの?」 と感じてしまうことが少なくないですね・・・。技術者といえば ITの話ばかり・・・。ITもまだまだ ”オフショア開発“ の域で、いま浮かれていては ”人件費が安くて優秀“ という ”人件費“ という条件が付きまとって、それが高くなったら終わり・・・という風な将来を若干危惧しています。いろんな産業の ”基盤” が整って、ベトナムが世界に誇こることが出来る "システム開発" 力 が得られるものであると考えます。

  ベトナムが目指していた工業立国(一応今でも目指しています)に対しては、日本で ”裾野産業“ と言われる部分をきちんと伸ばしていかなくてはなりません。”裾野産業“ とは、産業構造の説明の中で表される言葉で、本質は”高精度部品加工業“ とでも言うべきでしょうか。ベトナムの人の気質として ”高精度部品加工“ は、将来他国に対して高い競争力を持つことができる可能性を持つ分野であると思います。”高い競争力を持つことができる可能性を持つ~” などと回りくどい表現をしたのは、国の “人材育成への真剣度” によって、ということが重要と感じるからです。ベトナム政府が掲げた工業立国の目標は2020年でした。完全には難しいかもしれませんが、あと1年、将来に意義のある事をどれだけ進められるかです。

  日本の “高専” は、ご存知のとおり “高等専門学校” といい、中学卒業後に入学する5年制の教育機関です。日本の高度経済成長と科学技術の進歩に伴って工業技術の高度化に対応する技術者育成の必要性に応じて昭和37年に制度化されたものと説明されています。日本の全国各地(各都道府県と言ってもいいくらい)に国立の高等専門学校が設置されています。(一部私立の高専もあります)ベトナムでは高校卒業後、3年間の課程で考えられているそうです。

  ベトナムに進出した外資系製造業の悩みというか、当て外れというか・・・は、いつまでたっても部品を現地調達できないということですね。この点もなんとかしなければと、皆が思い始めてから20余年、ずいぶん時間がたってしまいましたが、今からでも、QCDが優れた高精度部品で高い国際競争力を持つよう、更に力を注いで欲しいです。

  余計なことですが、”裾野産業” は "Supporting Industry" と訳されます。ベトナム政府も "Supporting Industry の育成は重要課題" と言っていますが、"Support する" ための産業の育成なんて、ベトナムの人のモチベーションが上がらない言葉ですね。最初から ”高精度部品加工業" とか "高度精密加工業" などの言葉にすれば、 ”いい気になって”(失礼!)、全力集中して事が進んだことと思います。ベトナムの人が皆同じ方向を向いて本当に集中した時は、どんな国でもかなわない力を発揮することと思います。

  今、日本式技能検定がもっと社会に認知されて、ベトナムの工業系産業界においてその価値を活用して欲しいと思います。その価値を産み出すため、日本の “高専” をモデルにした実践的技術・技能者の育成が飛躍的に進化して欲しいと切に思います。

  日本へ “技能実習” で行っているベトナムの人がたくさんいますが、個々の事情や思い、制度や仕組みの良し悪し、本音と建て前・・・いろいろありますが、日本滞在期間が何年となっても、大半の人が国に戻る時が来ます。日本へ行く時にどんな事情や思いであっても、将来自分が国に戻った後、“技能” を自分の国の発展にどう活かすか、そのために日本で何をするべきか、視野を広く持って考えることができれば・・・と思います。技能実習生の周りにいろいろと難しいことがあるところ ”何を言っているんだ” と技能実習生の人達から言われるかも知れません。でも、“技能実習” から帰ってきた人にたくさん会いましたが、この辺の考え方の違いで、その後の社会での活躍やその人の生活がだいぶ違ってくるのでは?と感じることが多くありました。

詳細は右記下記URLをご参照下さい。  https://www.jica.go.jp/oda/project/1200375/index.html