ベトナムの飼い犬

【ベトナムに犬を連れていってみた】

  7、8年前ですが、日本から飼い犬を連れてきました。その時の事です。
  日本を出国するための手続きと、行き先の国に入るため(ベトナムへの入国)の手続きが必要となりますね。まず日本を出国する手続き。この手続きの目的は主に将来日本に帰ってくるためのものです。決められた項目について獣医師の診断を受けて、予防注射の証明書などを揃えて申請書類とともに “動物検疫所” へ提出します。事前に連絡をしたところ、予めFAXで書類を送って、書類審査を済ませておいてもらうことができるとの事でした。出国の日、空港の検疫事務所に犬とともに出向くのですが、書類の原紙などを提出、犬の自身の簡単なチェックを受けて、30分くらいで検疫事務所の手続きを終えることが出来ました。そして、外国に滞在中にしなければならない事(決められた種類の予防注射やその間隔、その時の証明書の事など)や、帰国の際の手続きなど、「これらをしっかり実施していただければ問題なく日本に帰ってくることが出来ますよ。」 と説明を受けました。そして、搭乗のチェックインカウンターへ行き、ケージに入れられた犬は、預け手荷物と同じ手続きで問題なくチェックインして、飛行機の貨物室に運ばれて行きました。犬はこれから出発までの約1時間、飛行中の約6時間、到着後受取までの約1時間、合計約7時間、飲まず食わずでトイレも我慢の時間です。飛行機の貨物室の環境をよく心配されますが、貨物室は基本的に我々人間が搭乗するキャビンと同じ与圧と空調になっており、気圧や温度は同じ環境です。ただ、言葉で説明をしてあげられないので、自分はどこにいてどんな状況か理解できないでしょうから、緊張の約7時間を耐えなくてはなりません・・・。因みに運賃ですが、うちの犬は体重20Kgでしたが、東京からハノイ片道18,000円でした。(当時手荷物の重量超過料金が、エコノミークラスで~32Kg 6,000円、~46Kgが12,000円、46Kg超が18,000円でしたので、生き物1個体の運賃とすると、意外に高くないですね・・・。)“因みに” をもう一つ、“検疫事務所” の場所ですが、この時は成田空港の第二ターミナルでしたが、その6階にありましたが、出発ロビーの中央くらい(出国審査へ向かう左右の入口の間)からビルの中に入り、犬が入ったケージをカートに乗せて空港の職員方々と一緒にエレベーターに乗って行きました。何か変なVIP感 (?) 。そして6階の普通のオフィスのドアをノックして検疫事務所に着きました。

  さて、気になるのはベトナムの入国手続きです。事前に情報が掴めず・・・。どこを調べても的確な情報が得られません。家内が在日ベトナム大使館に連絡をしてみると、(なかなか繋がりません・・・。何回かのトライで何とか繋がりました。)ベトナム人の職員の方で上手に日本語で対応してくださったそうですが、 「すぐにわからないので、確認して電話をします。」 との答え、連絡先TEL番号を告げて、数日連絡を待ちましたが、連絡がなく・・・。日が迫ってきたので、家内が再度電話をかけてみると、前回と同じ方が出て、「結局、わからないので、日本の獣医さんから受け取った診断書類をみんな持参して下さい。」 との答え。どんな項目の診断書?到着したらどこに提出してどんな手続きをするの?到着したら空港に一定期間留め置かれたりするの?等々、いろんな疑問があるのですが、やっぱりわからないとの答え。でも、犬のベトナムへの入国の困難さなどの心配事については、「大丈夫」 との事。

  犬とともに家族もベトナムに来たのですが、家族はベトナム航空で来ることになっていましたが、当時ベトナム航空は動物を預かることを受けていませんでしたので、仕方なく私が一時帰国し日本航空で往復。犬は私とともに日本航空でハノイに移動しました。(家族はベトナム航空で移動。私と犬がまだ成田空港にいるうちにハノイに到着。)その数日前、私がハノイから出発する際、日本航空のチェックインカウンターにいた日本人の職員の方に、「数日後、成田から日本航空の便で犬を連れてくる予定ですが、ベトナムの犬の入国に関して結局何もわからなかった。大丈夫でしょうか?」 と聞いてみたところ、この方は、「私も何回かお客さんの犬の入国を取り扱ったことがありますが、ベトナムの手続きは何もありませんので心配しなくて大丈夫ですよ。」 とのお話し。「預け手荷物受取のターンテーブルの近くにドアがあって、飛行機から降ろしたら、そのドアからそのままケージを床に置いてくれます。そのまま受け取って出ればいいですよ。」 と言ってくれました。

  さてさて、当日、ハノイの空港ですが、当時は国際線も旧ターミナルの頃でした。降機した私は、いつものとおり到着ロビーへ向けて廊下を移動し、階段を下りて、“動植物検疫” の事務所の前を通り、更に階段を下りて、入国審査のカウンターに並び、入国審査を終えました。さて、今度は預け手荷物受取のターンテーブルに進みます。そう言えば、“動植物検疫” の事務所前を通り過ぎちゃってますね。もう入国してますから “動植物検疫事務所” には戻れません。なるほど、預け手荷物で到着したものに対して検査する構造になっていないのですね。でも、手荷物を受取った後、税関を通らなければなりません。この “関所” に “動植物検疫” の出張所のようなものがあるかも知れません・・・。(今まで気にしたことはありませんでしたが・・・。)まだまだ少々緊張しながら、例のドアから外(飛行機が駐機するエプロン)を覗いてみると、ちょうど飛行機の貨物室から降ろされてくるケージとうちの犬の姿が見えました。そのまま待っていると、貨物コンテナを移動する車両に乗せられて、私の前に止まりました。そして、日本航空の職員の方が言っていた通り、そのドアから入って床にケージが置かれました。

  私はそのケージを、スーツケースなどと共にカートに乗せ、税関へ進みました。普段は、何も言われなければ素通りですが、この時、私は “別送品” がありましたので、“別送品申告” に印をもらう必要があり、税関のカウンターに足を止めました。税関の職員がケージの中のうちの犬を覗き込みました。でも “動植物検疫” の職員でないことは制服でわかっていましたので・・・。うん?関税がかかるの?それは想定していなかった・・・。と、また緊張していたら、ニコニコにながら “税関申告書” の “別送品” の欄にスタンプを押してすぐに返してくれました。どうやら犬好きだったみたいですね。ホッとして到着ロビーに出ました。そして、うちの犬は、ロビーにいる見ず知らずの人々の歓待を受けながら、やっと迎えの車の運転手と合流し、空港を出発しました。結局ハノイ到着後は、一部始終が日本航空の職員の方がおっしゃっていた通りでした。その後、日系の運輸会社や経験者などからいくつかの事例を聞くことができましたが、一応、ペットのベトナムへの入国もベトナムから出国も、手続きは決められている事があるようですが・・・、運用については、行政側の担当部門であっても明確な回答を得ることが簡単ではないとのことでした。

【ベトナムの飼い犬】

  1995年、日本でNHKの番組で 「今、ベトナムで “日本犬” を飼うことがブーム」 という話題(ホーチミン市の話題でしたが)を見たことがありました。ベトナムは犬料理の文化がある国ですので、その当時、犬を飼うのは裕福な人だけでしたが、“血統書” がついた “”日本犬” を飼うことが流行していたとの事。その犬の姿が映りましたが、とてもとても、日本の犬種には見えない “シーズー” のような姿 (“シーズー”に似た“狆(ちん)” は、日本原産の犬種でもありますが・・・。「似てるか?」と言われそうですが、ざっくり似てるかな?)、「日本ではみんなこの犬を飼っているんだろ?」 と言っているベトナムの人のインタビューも出ていました。結局、日本とは関係なく、ベトナムにいる “日本犬” とい名前の “犬種” というだけでした。1996年頃、ハノイでベトナム人の元高官の裕福な家庭に夕食に呼んでいただいたことがありましたが、そこにNHKの番組で見た “日本犬” のような犬がいました。「これはひょっとして “日本犬” ですか?」と聞いたら、うれしそうに、「そう。日本にはこれがいっぱいいるんだろ?」と。

  最近は、ハノイでもたくさん飼われている犬を見ます。’90年代は街であまり見ませんでした。野良犬もあまりいませんでしたね。「食用に市場に売られるから・・・」 と、ベトナムの人は言っていました。(全てということでは無いかと思いますが・・・)今でも犬を飼うのは、比較的 “お金持ち” が中心のようですが、シェパードやブルドッグ、ダックスフンド・・・等々、種類もいろいろ。そして、シベリアンハスキーが流行っていますね。またゴールデンレトリバーも珍しくありません。でも、40℃前後の気温になる季節が長いハノイでは、寒い地方の犬種や毛足の長い犬種は少々残酷で・・・。(犬種によっては “サマーカット” してあげればいいのに・・・。でもなんの犬種かわからなくなりますね。お金持ちのステータスにはあまり良くないのかな?)そうそう、今も一応 “日本犬” はいるそうです。もう流行ってはいないけど。

  また、繋がないで飼っているいる人も少なくなく・・・、ハノイの中心部でも、歩道を歩いていると、繋がれずに楽しそうに歩道上で戯れている大きなシェパードなどにいきなり出くわして・・・ こちらは結構緊張します。そんなことで、犬が盗まれることがよくあるそうです。昔は食用として市場へ直行だったかも知れませんが、今は、ペットとしての犬を扱うお店が並ぶ地域があって、そこへ直行のようです。(Ho Tay 付近にあるそうですね・・・。勿論最近は他にも増えたそうですが・・・。)日本人の奥様方から聞いたことがありますが、もしも自分の犬が盗まれたら、そこに行けば大体見つけることができるとのことです。でも、見つけられたとしても勿論買わなくてはなりません。その時、自分の犬であることを悟られないように 犬と共に “芝居” をしなければいけないとの事。元の飼い主が買い戻しに来たと悟られると、とっても ”ぼられる“ そうです。絵に描いたような ”足元を見る“ という状況でしょうか・・・。


【ついでに猫】

  ’90年代は、街で猫を殆ど見ませんでした。やはり食用やその他の目的で売られてしまうことが多かったようです。(現在でも猫は食用に取引されているようで、猫の料理屋もあると聞きます。犬ほどポピュラーではないですが・・・。)最近は、街を歩いて見ると、よく飼い猫を見ます。首輪をしていたり繋がれていたりしていて、飼い猫とわかるのですが・・・。繋がれている・・・ 猫には辛そうですね。でも、そうしないと盗まれたり(食用?)、交通事故の心配だったり(あの交通事情では猫の日課の ”縄張り確認“ もままならないかも知れませんね。)、まぁ繋いだほうが安心か・・・。ハイフォン市では、猫を飼うことを奨励して、”奨励金“ が出ていたという事を聞いたことがあります。やはり港町、船から上陸するネズミに困っていたそうで、その対策であったそうです。でも、実は ”飼い猫“ は好んでネズミを食べないですね。おなかがすいていたら別だけど・・・。まぁ猫がいるだけでネズミは寄ってこなくなりますね。

【ついでにネズミ】

  数年前にWHO(国際保健機関)のレポートで、ベトナムのネズミの駆除について書かれていたことがあったそうです。ネズミによる感染症が心配される国のなかでは、ベトナムはネズミの駆除が良く行われているという事でした。しかし、駆除後(駆除と言うより退治した後)の処理が出来ておらず、そこからの病気の発生などが心配と警鐘を鳴らされていました。要は、退治した後、路上でも何でもその場に放置ということが多いのだそうです。街でネズミが現れて周辺の若い男性5,6人いきなり駆け出し、ネズミを追いかけ踏んづけて退治、という光景を時々見ます。そして、その直後、この5,6人は何事もなかったように四方に散っていって・・・終わり、という光景。10~20秒くらいの出来事です。周りも何事もなかったように、元の街の雑踏の中、すぐに忘れら去られます。退治されたネズミはそのまま放置。WHOのレポートのことを聞いた時、この光景を思い出し、「なるほど!」 と思いました。(でも、みな自分の家の前はよく掃除をしていますので、翌朝までには片付いていることが多いですが・・・。でも退治した人はそこまで気を遣ってね。ゲームじゃないんだから・・・。)

【その他】

  ベトナムは犬を食用にする文化がありますね。何か、“お箸” 使う国にはその文化があったように感じます。(根拠はないですが・・・。)日本にもかつてありましたね。中国、韓国にもあります。

  寒い季節があるハノイでは、そのシーズンには犬料理屋さんが並ぶ地域があります。寒い季節の滋養には高級食材なのだそうです。昨年の秋、ハノイ市当局は、ハノイ市民に対して犬や猫を食用にするのをやめるよう通知を出したそうです。前述のとおり、犬や猫を飼う人が増えてきて “動物愛護” の意識が高まってきたことや、外国人旅行客からの拒否感が強くイメージダウンになること、また狂犬病などの感染症が広まるリスクなどが理由だそうです。それぞれの国の文化は否定しませんが、犬も猫も古代より人間とともに持ちつ持たれつで生活してきた関係、やっとそれを愛護する方へ目が向いてきたことは歓迎ですね。

  もう一つ、本題と全然違う話ですが、犬のベトナム入国のための手続きのために日本で準備する事について、在日ベトナム大使館で聞いてわからなかったという件、人間の場合も同じ状況があります。我々、ベトナムで仕事をする外国人は “労働許可証” を取得する必要があります。その申請に際して必要な事として、“健康診断書”の提出があります。そして、“労働許可証” は入国する前に取得することになっています。でも、その “健康診断” で求められる検査項目がわからない。他国でも、同様な事を求める国は珍しくないですが、日本国内にその国の在日大使館が指定した病院があって、大使館で説明を受けて、紹介状的な書面をもらい指定病院へ行くというプロセスになるのが普通です。ベトナムはそれがよくわからない。在日大使館ではわかっている人がいない。ベトナム国内には“労働許可証” 用の健康診断をやってくれる “準”指定病院のようなところがあり、必要な検査項目もわかっています。だったら、ベトナムの当局(これは、“労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)” の管轄ですね)と、在日ベトナム大使館が連携を取ってくれれば難しい話ではないのですが・・・。以前、当局の担当者と話す機会があって、その連携をお願いしたことがありましたが、これについてだけは、“Yes” とか ”善処” とかの返事は一切してくれませんでした。ベトナムの役所では “横連携” はそんなに難しいのね・・・。 

  締めのところで、本題と全然変わってしまってすみませんでした・・・。

  写真は、ハノイの街、または近郊で見かけた犬の写真です。中段の写真の左、凛々しく座っている左上の黒い犬。ケージと鎖でちゃんと管理されていますね。その右隣りの写真は、今流行りの “シベリアンハスキー” ですね。よく大人しくバイクの後ろでじっとしていますね。さらにその右の写真、バイクの後ろの籠に乗せられている犬と猫は多分食用です・・・。
下右の茶色毛足の短い犬はベトナム原産種の “フーコック犬” です。

2019年03月02日