ベトナムの鉄道

  ハノイ←→ホーチミン間、最も速い列車で29時間です。ポピュラーな列車はハノイ19:000発の列車で、ホーチミンには04:10着、翌朝ではなく、翌々日の朝です。この列車の所要時間は33時間ですね。ベトナムの鉄道は電化区間はありません。すべてディーゼル機関車が牽引する客車列車です。また単線です。線路の幅が狭く、「狭軌」と言われる日本の在来線の線路の幅1,067mmよりさらに狭くて1,000mmです。昔は 「植民地ゲージ」 と言われていました。北部には中国へ直通する列車がありますが、中国は新幹線と同じ「標準軌」であるので、3本のレールを引いている区間があります。(一番下にある写真が3本レールのハノイ側の終着のGia Lam駅の写真です。)一時 ”新幹線” を日本の援助で導入しようと考えていた時期がありました。ベトナム国会へ”政府提案”として審議にかけられましたが大紛糾。否決ではないですがペンディングになり、以来そのままのようです。”政府提案”が通らないというのは滅多になかったことだそうです。その後、新幹線でなく、日本の在来線の高速列車のような列車を作りたいとの話が出たことがあったようです。でも、1,000mmゲージでは出せる速度に限度がありますので線路の幅を変える必要があるでしょう。また複線にしなくてはなりません。ちょっと気の遠くなる話ですね。

  特に貨物輸送には鉄道は重要です。ベトナムは鉄道も道路も南北の輸送力が足りず大変残念なところです。北は中国華南地区、西や南西方面にインドシナ諸国とタイやミャンマー。南北の輸送力があると経済的にベトナムの ”地の利” を活かせるところかと思います。

  写真は、ハノイ-ホーチミン間の列車の寝台車。二段寝台のコンパートメント(個室)と三段の開放寝台です。個室と言っても4人それぞれ他人が入ります。そのほかの2つの写真はダナンとフエ間でのものです。ハイヴァン峠の前後の駅では補助機関車を付けたり切り離したりで少々停車時間が長く、たくさんの物売りで賑やかです。機関車の写真はハイヴァン峠の補助機関車です。ハイヴァン峠は難所で、日本の昭和初期、東海道線の箱根越えのようです。但し単線で難所の峠越えはほぼ必ず遅れるようで、周辺の駅では補助機関車の連結・開放の時間以外に上下列車のすれ違いのために待ち時間ができます。単線なので片方が遅れても両方が遅れざるを得なくなります。

  そう、もう一つの写真は、日本ではほとんど無くなってしまった”食堂車”です。この日は乗務員の憩いの場になっていました。そうそう、客車一両当たりに一人ずつ車掌さんが乗っています。日本も1960年代の寝台列車には一両当たり一人ずつ乗っていて、寝台のセットや解体と客扱いをしていました。(渥美清や三國連太郎の昔の映画でその様子を見ることができますね)また東京から鹿児島24時間とか30時間とかの列車もありました。今となっては、ベトナムの列車の旅はちょっと贅沢な旅を楽しめるところかもしれません。(でも、寝台のセットや解体をしませんので、各車の車掌はあまりやることがないようですが・・・)

  ベトナムの旅客鉄道は、長距離主体で通勤に使うようになっていません。現在、ハノイやホーチミンには都市鉄道や地下鉄の建設工事が進められていますが、今はまだ通勤に鉄道という発想は持てる段階でなく、結局自分でバイクで通勤することが主体にならざるを得ないですね。そうそう、ハノイ市内のバスですが、「ハノイ駅行き」という路線はありません。市内交通と鉄道が繋がっていないという事がわかります。(もちろん駅の前にバス停はありますが・・・)

2018年10月27日