ハノイの街路樹


  ハノイはとても美しい街です。でも、「ハノイは狭くて、バイクが多くて空気が悪くて汚くて、うるさくて良くありません。」 と言うハノイの人は少なくありません。ハノイの市街はどこに行っても高くうっそうと茂る街路樹があっていつでもその緑に囲まれている美しい街と思います。私はよくハノイの人に 「世界のいろいろな国の首都でこれだけ緑に囲まれた首都はそう多くない筈、ハノイの人はそれを見直すべき」 と言います。3割くらいの人は、ちょっと宙を見つめて、「そうですね-」 と言って、ちょっと誇らしげに微笑んでくれたりします。「そんなことは無い!」 と、ますます顔をしかめる人も少なくないのですが・・・。

  余計な事ですが、前者のような人は、新しいことに活躍する人材になる可能性を持った人と感じます。”人の言うことをきく” ということではなく、今まで考えてもみなかったことに直面した時に、それに対して自分の考えに固執することなく、未知だったことに対してすぐに目を向けるということかと思います。今まで会ったベトナムの人でこれとは逆の人が多かったので・・・。

  話を戻すと、ハノイの街路樹は背が高くとても立派な木が多く、これだけでも街の長い歴史を感じます。2015年にハノイ市は、6,000本以上の街路樹の植替えを発表した事がありました。これには賛否両論、市民からは反対意見がとても多かったようです。一部はすぐに伐採が始まり市民が大騒ぎ、担当部署の長が更迭になったとのニュースを聞きました。植替えの理由は、古かったり健康状態の悪い木は倒木の危険があるのでということ、また植樹が認められていない樹木の伐採ということも含まれていたようです。反対の理由は、新たに植えた木は大きな街路樹に育つまでは時間がかかると言うことや、街の景観が損なわれるということのようです。難しいところですね。伐採対象の木にそれほど状態が悪くないものも多く含まれていたという意見もあってそれも大騒ぎの理由のようです。ハノイ市は伐採の一時中断の指示を出しました。その後はどうなったかわからないのですが、街を見る限りではあまり大きく変わっていないかと感じます。難しい問題ですが、ハノイの街路樹を守りたいと思う市民がこんなに多くいたことは、く外国人の私でもちょっと誇らしく感じました。

  ハノイ市が倒木の危険を懸念したように、最近、強風の時にはあちらこちらで倒木の被害を聞くことが多くなった気がします。2016年には突風での倒木でタクシーが下敷きになったり、バイクが直撃にあったり、死亡事故もありました。Hai Ba Trung 通りにあるベトナム保険監督庁では、4階建て庁舎が、背の高い街路樹の倒木で、屋上付近の外壁が破壊され、根元にあった守衛所が破壊されていました。

  木が古いということばかりでなく、南国の木はあまり根がはっていないと言いますね。それでは突風のような強い風には耐えられないかも知れません。(ベトナム以外の南国の国でも倒木の話は聞きます。夕方に ”倒木渋滞” なんて言葉を聞くこともあります。)特にハノイは、元々湿地で地中の水分や栄養分が十分なのかと思いますので、木はあまり根を深く広く張る必要が無いのかも知れません。日本で、春の田植えの時、稲の苗を植えた直後、田んぼの水をいったん抜くのだそうですね。そうすることで、稲は水分や栄養分を確保するために根が深く広く張るのだそうです。そして稲穂が重くなった頃の台風の風に耐えられるようになるそうです。ハノイの街路樹の話にには別に参考となる話ではないですが、植物も生物も人間もハングリーでないといけないということですね。

  写真は、1998年(2つ)、2008年、2018年(2つ)の10年ごとの様子で、場所はどれもHoan Kiem区内です。

2018年11月10日