”ベトナム人のおなまえっ!”

  いまさらの話題ですが、ベトナムの人の名前、苗字の種類が少ないということはよく知られていますね。Nguyen(グェン)という苗字の人が圧倒的に多いですね。だから、ニュースなどでベトナムの国家主席や首相など国家元首級の人の名前がファーストネームまたはフルネームで言われます。これは実は珍しいことですね。今の首相は”フック首相”ですが、苗字は”グェン”さんです。前首相も苗字は ”グェン” さんでした。前首相は、”ズン首相” と言ったほうがみなさんすぐわかるかと思います。”グェン”さんと言ったら誰だかわかりにくいですね。“グェン” さんという苗字は、現在ベトナムで4割ぐらいを占めるそうです。日本で、ちゃんとした出版物の記事でも、その事情をよく知らない日本人ライターが、単純に 「XXXのグェンさんは・・・」 と書いていたりします。それから、発音しない “N” を含めて ”ニュェンさん“ なんて書いちゃったりしているのをわりとよく見ます。 「このライターはベトナムの基礎的な事も調べてないのね・・・」 と、記事を読む気を失くしたりします。

  女性の名前で ”ホア” さんという名前はとても多い名前です。”花” という意味ですね。従って、“Nguyen Thi Hoa(グェン・ティー・ホア)という名前がとても多かったです。過去形で言ったのは最近は随分減ったなぁ と感じるからです。”Thi” は女性に必ず着くもので、日本人で言ったら ”子” と言ったところでしょうか。(”Thi“ の元々の漢字は”氏” なんだそうですが)また、最近はあえて “Thi” を名前に付けない人も増えてきました。日本人で “子” がつく名前が昔と比べると少ないのと同じようなことでしょうか・・・? 私の会社では、 1990年代は従業員が300人くらいでしたが、“Nguyen Thi Hoa” という名前の従業員が30人いました。日本で言ったら、”山田花子” というようなイメージですね(”グェン”と”山田”は何も関係ありません。ただ多い名前と言うイメージだけです。)2、3年前、思い出して調べた事がありました。その時は従業員が1,000人くらいだったのですが、“Nguyen Thi Hoa” さんは、5人でした。それだけ名前が多様になってきたということで、ベトナムも”ダイバーシティ”な社会になってきていますね。

  ’90年代は本当に名前の種類が少なく、同じオフィスに “Hoa”さんが3人も4人もいることがよくありました。どうやって区別するのか?・・・。名前のうしろにABCをつけて区別していました。 “ホアA”、”ホアB”、”ホアC”というように。「そんな失礼な!」 と日本人は思ってしまいますが、この方が便利で良いのだそうです。確かに便利だけど・・・。そのうち、「A オ~ィ」、「Bオ~ィ」 などと呼ぶようになってしまう始末・・・。でも呼ばれるほうも全然平気なんですねぇ。

  そう言えば、これも数年前、ある会社でフィリピンの関連会社へ従業員を少々長い期間派遣するため、ビザを取ろうとしたそうなのですが、メンバーに “Nguyen Thi Hoa” さんがいたそうです。手続きを始めたら、フィリピンのイミグレの ”ブラックリスト” に “Nguyen Thi Hoa” が載っていて、通常の手続きではビザは発給されないと言われたそうです。そのための手続きは現地で弁護士を頼まなければならず、費用も時間もかかるので、“Nguyen Thi Hoa” さんの派遣をやめたそうです。この名前が最近減ってきたとはいえ、またフィリピンへ行くベトナム人は比較的少ないとはいえ・・・、こんなにたくさんいる “Nguyen Thi Hoa” をブラックリストに載せたままにしているというのは・・・。フィリピンもベトナムもイミグレ関連の役所は 「もっと考えてよ!」 と、呆れたと聞きました。

  ”Hoa“ さんという名前は、今もたくさんいますが、昔よりちょっと ”ひと捻り” というものが多くなってきているようにも感じます。もとの漢字が ”花” だけでなく、”華” という名前も時々聞きます。また意味と発音が全然違いますが、元の漢字が “和” の “Hoa” さんもいます(時々男性でも “Hoa” さんがいますが、男性の場合は “和” であることが多いですね。昔、埼玉県知事をされていた “畑 和(はた やわら)” さんという方がいましたね。関係ないですけど・・・)また、”花” の “Hoa” さんでも、”Hong Hoa“ → ”赤い花=薔薇” という意味の名前だったりと、最近は可愛い我が子の名前に親御さんがちょっと工夫している様子がうかがえます。


  今、25歳から35歳くらいの人の名前で、“Trang(チャン)” という名前がすごく多いように感じます。この世代の人が生まれた頃、とても人気のあったテレビドラマか映画の主人公の名前が “Trang” だったと聞いたことがあります。(でも、いろんなところで聞いてみましたが、諸説あってこれまた確証は得られませんでしたが・・・)”石を投げれば” 何とか ・・・というくらいチャンさんという名前を聞きました。もしもドラマや映画の主人公だとしたら、こういうことはどこの国でも同じですね。

  ご存知のとおりベトナム語の多くの言葉は元々が漢字です。7割ぐらいは漢字での表記が可能な言葉といいますね。名前も勿論同様に漢字の表記ができます。ベトナムの人に “あなたの名前の意味は?” と尋ねるとほとんどの人がちゃんと答えてくれます。それはその名の漢字の意味ですね。そんな時、その漢字を想像してその漢字の “音読み” を思い出してみて下さい。ベトナム語の発音に近いことが少なくないと思います。(近いと言っても発音に厳格なベトナム語にとっては全然近くないですが・・・、日本人的な発音の範囲では比較的近いと感じられるかと思います。)今、日本語を勉強しているベトナムの人であれば、これはちょっとした会話の話題になると思います、また、日本語の漢字の勉強に苦労しているベトナムの人にとっては漢字への興味を深めるきっかけになるかも知れません。

(写真は話題とはあまり関係がなくてすみません。イメージ写真として・・・)

2018年11月29日