ベトナムは地震国?

  「ベトナムには地震はありません。」と、ベトナムの人はたいていそう言うかと思います。確かに街を見ると、地震を考慮した建物の作り方ではないですね。皆、レンガを積んだ壁が基本(といっても中にはちゃんと“鉄筋”が入っていますが)、また日本の常識から考えるととても細い柱。狭い敷地に背が高いというか “ひょろ長い” 建物。また、フランス統治時代の、つまり100年を優に超えた“石造り”の建物が多く残っている事。やはり “地震” が無い国に見えますね。

 

  実際どうなんだろう?と、調べてみると、“ベトナムは世界的に見ると平均的な地震国” とありました。殆どは “無感地震” だそうですが、毎日地震が発生しているそうです。

  大きな地震はというと、過去の記録を平均すると、50年に1度の割合で起きているそうです。最近では1958年にVinh Phuc から Phu Tho にかけて、マグニチュード5.3の地震が記録されているそうです。但し、揺れが大きかった地震は、この時もさらにその50年前も比較的人口の多くない(というより人があまり居なかった)ところで起きたようで、これもハノイの人が 「地震はない」 と断言する理由なのかも知れません。もっともハノイ周辺は大規模な地震を起こすほどの震源は抱えていないようですが、北部の山岳地帯はプレート境界の近くで多少危険をはらんでいるようです。そう言えば、2008年5月に中国・四川省で大地震がありましたが、四川省は地震の多いところですね。あらためて地図で確認してみると、ベトナム北部から四川省はそれほど遠くないのですね。(この地震の際、ハノイでも震度2程度の揺れがあり、大騒ぎになっていましたね。)

  ベトナムの建築物は、“レンガ”を積んだ建物が多く、日本人は ”もしも地震があったら・・・” と心配してしまいますが、建設中の建物を見ると、“レンガ”は壁だけで、まずは、“鉄筋コンクリート”構造の柱を造って、その後 “レンガ” を積んで、“レンガ” の構造の中にも “鉄筋” を通して壁を造っていますね。見かけより強そうです。そういえば、以前会社の建物の間取りの改造で、50㎡くらいの面積の “レンガ” 構造の壁を壊して部屋を広くしたことがありました。担当した従業員達は “つるはし” で10人くらいでかかれば、1日で終わると言って素人仕事で始めましたが・・・、とんでもない、びくともせず・・・。午後には、どうしたのか、どこかから持ってきたのか、道路工事などで使う 大型の“振動ドリル” を借りてきて・・・、結局2日がかりの ”やっとの思い” で壁を抜きました。(ちょうど連休の時でしたので、稼働日に影響しないで済んだのですが・・・)これなら、“レンガ”の壁も 侮るものではないなぁ、と感心したものです。

  日本人は、「日系のゼネコンの建物なら多少地震があっても大丈夫ね」 と、思っている方も少なくないのですが、あくまでもその国の建築基準で建てるものなのだそうですね。日系のゼネコンの方から聞いたことがあります。そう言えばそうですね。その国の法令を守ることが基本で、日系だから日本の耐震基準を適用する必要がないのは当然ですね。でも “施主” が指定した場合は別(勿論、その分のコストを負担するわけですが)で、ハノイにもいくつか “施主” の指定で、震度7耐震の設計となっている物件があるそうです。

  ベトナムの建物、“鉄筋コンクリート構造” の建物と言っても、例えば、狭い土地に間口5~6mくらいで8階建てのミニホテルなどをよく見かけますが、四隅に細い柱で “ひょろ長い” ビルだとやっぱり怖い気がしてしまいます。このような “ひょろ長い”ビルで、しかも幹線道路沿いのミニホテルに泊まったことがありますが、揺れる事、揺れる事・・・激しく揺れるわけではないですが・・・何か船に乗って一晩過ごしたみたいで・・・。建物のせいだけでなく、幹線道路の交通の種類や量、それから道路の質なども影響するのですが、ここでもしも大地震が起きたら、と考えると眠りの浅い晩となってしまいました。

  2011年3月、日本で “東日本大震災” があったそのすぐ後の3月24日に、ミャンマーとタイ北部国境付近を震源としたマグニチュード6.9の大地震がありました。この時、ハノイでも震度1~2程度の揺れを感じました。またまた大騒ぎで、私の住むアパートでも揺れを感じました。1階のレセプションへ行き(迂闊にもエレベーターで行ってしまいましたが・・・)、「今の揺れは “Earthquake” ?」と聞いたら「“Earthquake” ではありません。」 と断言。「今、揺れは感じなかったの?」 と聞いたら 「揺れました。」 との答え。「では今の揺れは何?」 と聞いたら 「???」 でした。ロビーには、ベトナム人が多かったですが、たくさんの住人が下りてきていました。(皆、私と同じくエレベーターで降りてきていましたね。)他のアパートでは・・・、Ho Tay のほとりのアパートの話を、そこの住人の日本人から聞いたのですが、そこは大型の比較的高級なアパートですが、住人のベトナム人が何人も外に出てきて、少々慌てた様子で、地下駐車場から自分の車を出してどこかへ逃げて行ったそうです。実際に逃げて行ったのかわかりませんが・・・。Ho Tay のほとりなので津波を心配したのか?野次馬的にどこかを見に行ったのか?闇雲に逃げたのか?でも、地震に慣れている日本人から見ると、少々不思議な光景であったそうです。

  この様子も、私の住んでいるアパートのレセプションもそうですが、みんなあまり地震の経験がないので、もしも大きな地震があったら、とても混乱すると感じました。建物の強弱の事もありますが、ハノイに住む我々外国人はその混乱を想定して、もしもの場合の自分の行動を考えておくべきかも知れません。

  因みに2011年3月11日(金)の “東日本大震災” の際には、翌稼働日である3月13日(月)にベトナムのズン首相(当時)が在越日本大使館を訪れて、谷崎大使(当時)に、“義援金” を自ら届けて下さったそうです。とりあえずの義援金ということであったそうですが、いち早くということで、自らいらっしゃったそうです。ベトナム政府の日本に対する思いに強く感動した次第です。

  写真は、あまり関係ない写真ですが、飛行機から撮ったハノイ市の全景、建設中の家屋の写真、ロンビエン橋付近、ホアンキエム湖(ちょっと古くて周りに高層建築がまだ多くない頃です)、ハロン湾です。

2019年03月13日