ハノイの市場

  ハノイの街には公営の大小の市場があちらこちらにあります。(社会主義なので設立時はみんな公営でしたね。)大きなところでは、Hom市場やDong Xuan市場、Hang Da市場などが有名なところでしょうか。それぞれ特徴があって、Hom市場はその周辺も含めて服地や生地のお店が集まっています。(会社の作業着なんかも業者がHom市場へ買いに行ったりしています。だから油断すると、同じ色の生地が見つからなかったとかで、作業着の色がちょっとずつ変わってしまったりします・・・。)Dong Xuan市場は ”総合百貨店” といったところでしょうか、何でもあって、業者が大量に仕入れている様子も見受けられます。だからちょっとした観光客なんかには ”一見さんお断り” 的に値引き交渉もつれないものです・・・。Han Da 市場ですが、Hoan Kiem湖から徒歩10分かからないところにありますが、2010年に立派な建物にリニューアルされました。それ以前は、お世辞にも綺麗とは言えない市場でしたが、観光客に人気のある ”ベトナム雑貨” や”バッチャン焼” が豊富に売られている市場でした。その頃の日本の観光ガイドには、”必ず見るべき” とページを割いて掲載されていたくらいで、実際にいろいろな国の観光客が訪れていて、雑貨屋さんが集まるフロアはいつも賑わっていました。

  2010年の頃、ハノイ市内各地の大きな面積を持つ "市場" を ”商業ビル” にリニューアルすることが流行っていました。今、振り返ってみると、”商業ビル” にリニューアルしたところは皆失敗と言っていいかと感じます。オフィスビルを建てて賃貸スペースにして、地域住民の生活のための ”市場” は地下にスペースを作るというところが多かったですね。地域住民のための ”市場” は、地下の薄暗いスペースに押し込まれて不便になり、賃貸スペースはガラ空き、といった様子。そう言えば、ハノイ市が、ハノイ市内各地の公営の市場を近代的なスーパーマーケットに作り変えるとの構想を打ち出し、市民から大反対を受けて、構想が立ち消えになったのもその頃でした。

  失敗の最たる例が ”Hang Da(ハンザ)” 市場と言えましょう。2010年に全面的リニューアル。オフィスビルではないですが、商業テナントを入れるビルに建て替えて、市場は地下に、地上1~3階はハノイで見られる全てと言ってもよい程の ”ブランド店”。何を考えたのでしょうか?雑貨を求めて市場に来ていた外国人観光客は、ブランド品にもっとお金を落とすと考えたのでしょうか?少々失礼な言い方をして申し訳ないですが・・・。でもそう思わざるを得ないくらい、大きな国際空港の免税店街のようにブランド店の列、でもオープン直後から ”閑古鳥” 状態で、半年後には空きスペースだらけ、日に日に廃れていく様子が手に取るようでした。そして日本の旅行ガイドに "Han Da 市場” の記事は見られなくなりました。現在は、スポーツジムが広くスペースをとっているようで、残りを雑貨屋、ベトナム雑貨でなく、どこの国にもある一般的なおしゃれ雑貨のテナントが少々入っている様子です。”閑古鳥” 状態はあまり違わないようですが、最近スポーツジムのスペースが広くなってきたようですので、こちらはそれなりに流行ってきたのでしょう。

  最近、地下の市場スペースで、”バッチャン焼” を売る店が複数出るようになったようで、”穴場” として紹介されていたりします。昔のままの市場にしておけば・・・今頃は・・・と、言ったところで、残念でなりません。ベトナムでよくある稚拙な失敗例(失礼!)なのではないでしょうか。現在はビジネスで大きな成功を収めているベトナムの人の話をよく耳にするようになりましたので、この10年こういったところの感覚も大きく変わってきたかと思いますが・・・。

  ベトナムの市場、地域住民の生活の市場としての部分、今でもあちこちに大小の市場が盛業しています。その日の早朝に捌いた肉類や生鮮品など、だいたい昼までには売れてしまいますね。首都の街中で、その日の生鮮品を毎朝手に入れられるのは、ちょっと贅沢なことですね。”冷蔵庫の要らない生活” が出来ます。”エコロジー” を加速させていくべきこれからの世界、そしてベトナムでも近年 ”エコロジー” が重視されるようになりました。ハノイの市場について ”時代遅れ” と言っている人は少なくありませんが、”冷蔵庫の要らない生活" が出来るというところ、実はとっても先進的なことかも知れません。

  日系の電機メーカーの方から聞いたことがありますが、ベトナムのマーケットで売る ”冷蔵庫” は、庫内の棚などの設計が日本のそれとは少々違うそうです。”冷蔵庫” の目的が食料品を保存するためというより、飲み物やフルーツやスイーツなどを冷やすため、ということだそうです。生鮮食品はその日に調達~消費ということは、以前から現在も当然なことなのですね。飲み物を冷やすためだけなら、これからは単に大きな ”冷蔵庫” でなく省エネのものでね。

  写真は、① Hang Da市場です。残念ながらHang Da市場は写真を撮ったことがありませんでしたので、外観の写真だけあるサイトから拝借させていただきました。②は Hom市場 1998年頃、③④は Dong Xuan市場、2018年です。Dong Xuan にはいろんなものがあります。⑤⑥は Hom市場、2007年。⑧ Dong Xuan市場、2018年。商品の上に乗ってしまっていますね・・・。

2019年01月09日